マッチレポート

世界柔道選手権 9年ぶりの日本開催

2019/8/25〜9/1に、日本武道館にて世界柔道選手権が開催されました。

日本で世界柔道選手権が開催されるのは、2010年に国立代々木競技場で開催されて以来ですので、9年ぶりの日本開催でした。

演出が派手だったり、外国人の観客が多かったりで、日本国内の試合とは雰囲気が違っていて非常に楽しかったです。




会場外の雰囲気はこんな感じ

チケット売り場のブースが設けられていました。

写真は大会初日の様子なのですが、並んでいたのはほとんど外国人でしたね。
英語圏以外からのお客さんも多くて言葉が通じないからか、列が全然進みませんでした…

グッズや食べ物を売っているブースがあったので、私はタオルとレモネードを買ってみました。




入場時はセキュリティチェックも?

今回は、入場時に荷物チェックがありました

日本国内の大きな試合には結構足を運んでいるのですが、荷物チェックされたのは初めてでした。

来年開催される東京オリンピックのリハーサルも兼ねていたのでしょうか?


私は今回Bブロックのチケットを購入していたのですが、毎回違う色のリストバンドが配られていました。


このリストバンドの有無で、セキュリティの人がBブロックと自由席の観客を見分けていました。

大会運営の方が1週間前に導入を決めたようですね。




会場内の雰囲気は?

アップの様子はこんな感じでした。

試合会場では上半身が道着で下半身がジャージのスタイルでアップしている人がいたり、帽子をかぶってアップをしてる人がいて新鮮でした。

日本だと下半身ジャージの人はたまに見かけますが、帽子をかぶっている人は見たことないですね。

予選ラウンドは2試合場で行われていました。

男女で会場が別れているのでなく、組み合わせの山の前半後半で別れていました。
個人戦は、1日に2階級だけでしたので、テンポよく進んでいました。

因みに、予選ラウンドは準々決勝まで行われました。

決勝ラウンドは1試合場で行われていました。

決勝ラウンドは、準決勝、敗者復活戦、3位決定戦、決勝戦が行われていました。


決勝ラウンドは、会場全体が暗くなり、試合会場だけライトアップされておりました。

入場時も派手な演出があり、格闘技のプロスポーツを観戦しているようでした。


また、試合会場を囲むようにカメラが沢山設置されており、決勝ラウンドではモニターに技が決まったシーンを360度の視点から見ることが出来ました。

武道デモンストレーションもありました。

決勝ラウンドが始まる前に武道のデモンストレーションがありました。
毎回異なる武道だったので面白かったです。

最終日の団体戦はほぼ満員?

残念ながら全日満員とはいかなかったのですが、最終日の団体戦のときはほぼ満員でした。
これだけ観客が集まってくれると嬉しいですね。

平日はスーツ姿の方も見受けられましたので、仕事が終わってからファイナルラウンドだけ見に来る人もいたようですね。

VIP席も設けられていました。

会場にVIP席が設けられており、大会最終日には安倍総理大臣の姿も見られました。

 




試合結果

今回の世界選手権は、来年の東京オリンピックの代表選考に関わる重要な大会です。
ここで優勝できれば、代表に一歩近づきます。

選考方法は、下記の記事を参考にしてください。

柔道東京五輪代表の選考方法が公開されましたね! 柔道東京五輪代表の選考方法が公開されたので、備忘録も兼ねて記事にしました。 (adsbyg...

-60kg

-60kgは、髙藤直寿選手と永山竜樹選手が出場しました。
髙藤選手は準々決勝戦で敗退し、永山選手は準決勝で敗退してしまい、3位決定戦で直接対決が実現しました。

髙藤選手が先に技ありを先行したのですが、終盤で永山選手が合わせ技一本で逆転勝利を収めました。

世界柔道 2019 60kg3位決定戦 N.TAKATO vs R.NAGAYAMA Judo

 

-66kg

-66kgは、丸山城志郎選手と阿部一二三選手が出場しました。
丸山選手は準決勝戦で阿部選手に勝利し、決勝戦では韓国代表のキム選手に勝利して優勝を決めました。

丸山選手は、大阪GS、体重別、世界選手権と阿部選手に3連勝しています。
11月の大阪GSで優勝すればオリンピックの代表が決まりそうですね。

阿部選手は世界選手権3連覇がかかっていたのですが、残念ながら負けてしまいましたね。
11月の大阪GSは絶対に負けられない大会となってしまったので、丸山選手に対してどういった戦い方をしてくるか注目です。

-73kg

-73kgは大野翔平選手が出場しました。
オール一本勝ちで優勝し、圧倒的な強さを見せつけていましたね。

今回優勝したことで、世界選手権で3度優勝したことになりました。

-81kg

-81kgは藤原崇太郎選手が出場しました。

藤原選手は昨年の世界選手権で2位になっていたので、今年も上位に食い込むかと思いましたが、残念ながら初戦で技ありをとられて敗退しました。

-81kgはレベルが高かったです。

 

また、81kgはイラン代表のモラエイ選手が国からの圧力により準決勝以降全力が出せなかったことで問題になりましたね。

https://www.ijf.org/news/show/the-true-story-of-a-fight-for-life

IJFはあらゆる国際競技団体に先駆けて、難民チームを認定して五輪への出場の門戸を開いている。今世界選手権でもIJF代表として「難民チーム」が団体戦に参加している。ビゼール会長は今後について、「モラエイ選手を難民選手団の一員として東京五輪に参加させたい。あらゆる支援をする」と意向を示した。

引用元:https://www.dailyshincho.jp/article/2019/09100555/?all=1

モラエイ選手は昨年の世界選手権の金メダリストで、4回戦でリオオリンピック金メダリストのハルムルザエフ選手と対戦して勝利しています。

試合を見るかぎり、このまま優勝してもおかしくない柔道をしていたのですが、準決勝以降の動きが急に悪くなったのがわかりました。

東京オリンピックでは全力を出して戦えればよいのですが…

世界柔道 2019 81kg4回戦 S.MOLLAEI vs K.KHALMURZAEV Judo

 

世界柔道 2019 81kg 準決勝戦 S.MOLLAEI vs M.CASSE Judo

 

また、イスラエル代表のムキ選手とエジプト代表のアブデラルが準決勝戦で対戦し、アブデラル選手が握手を拒否したことで会場からブーイングがおきました。

そのとき、先にポイントをとったムキ選手が、時間を稼ぐために逃げていたことに対して苛立っての行動と思っていたのですが、調べてみると既に和解済みですがイスラエルとエジプトは長年戦争をしていたみたいですね。

マナーとかそんな簡単な問題ではなく、もっと複雑な背景がありそうです。

調べてみるとリオオリンピックでもエジプト代表のエルシャハビ選手がイスラエル代表との握手を拒んでいたみたいですね。

世界柔道 2019 81kg 準決勝戦 S.MUKI vs M.ABDELAAL Judo

 

綺麗事かもしれませんが、スポーツを通じることで、国境間や宗教、その他考え方が異なる者同士の蟠りがなくなってくれることを心から願います。

-90kg

-90kgは向翔一郎選手が出場しました。

結果は2位でしたが、決勝戦を見る限り優勝した選手との差はほとんど無かったように思えました。11月のGS大阪での試合が楽しみです。

また、向選手の応援団で旗を持っている人がいましたね。
柔道の試合では初めて見ました。

-100kg

-100kgはウルフアロン選手が出場しました。
準々決勝戦で韓国代表のチョ選手にGSの末、技ありを取られて敗退しましたが、敗者復活戦、3位決定戦で勝利し3位に入賞しました。

ウルフ選手は、4月の全日本選手権で優勝したので、今回の世界選手権での活躍も期待していただけに残念でした。

全体的に体が動いていなかったように見えました。
調整失敗か怪我か何か原因があったのでしょうか。

+100kg

+100kgは原沢選手が出場しました。
原沢選手は準決勝戦で、2018年世界選手権のツシシビリ選手に勝利したのですが、決勝戦でリオオリンピック-100kg金メダリストのクルパレク選手に反則負けし、2位となりました。

決勝戦では、GSに入ってから原沢選手がバテていたように見えていたのですが、クルパレク選手からは疲れている様子は見られませんでした。

クルパレク選手はスタミナがあり、寝技も上手い印象でした。

世界柔道 2019 +100kg 決勝 H.HARASAWA vs L.KRPALEK Judo

 




−48kg

-48kgは渡名喜風南選手が出場しました。

決勝戦は昨年と同じウクライナ出身のダリア選手と対戦し、技ありで負けてしまいました。

贔屓目なしで見ても、ダリア選手に3つ目の指導が入っても良さそうだったんですがね…

おそらく、技ありを取られていなければ、3つ目の指導を取れていた可能性はあったので、次回以降の対戦が楽しみになりました。

−52kg

-52kgは阿部詩選手と志々目愛選手が出場しました。

阿部選手は2連覇を達成しました。
非常に強かったです。

志々目選手は準々決勝戦でリオオリンピック金メダリストのケルメンディ選手に負けたものの、敗者復活戦と3位決定戦で勝利し3位入賞を果たしました。

−57kg

-57kgは芳田司選手が出場しました。

昨年の世界選手権で優勝しており、2連覇がかかっていたのですが、決勝戦でカナダ代表の出口選手にGSで技ありを取られて2位となりました。

−63kg

-63kgは田代未来選手が出場しました。

準決勝でリオオリンピック金メダリストのトルステニャク選手と対戦すると、相手の反則技により勝利しました。
決勝戦では、昨年の世界選手権金メダリストのアグベニュー選手と対戦するとGSで技ありを取られて敗退し2位となりました。

−70kg

-70kgは新井千鶴選手が出場しました。

新井選手は3連覇がかかっていたのですが、3回戦でポルトガルのティモ選手に敗退し入賞なりませんでした。

−78kg

-78kgは濵田尚里選手が出場しました。

濵田選手は2連覇がかかっていたのですが、決勝戦でフランスのマロンガ選手に一本負けし2位となりました。

濵田選手は寝技が非常に強い印象を受けました。
手をついたりして畳に肩をつけないように投げられようとする外国人に対して、寝技でポイントを取れるというのは有効な武器になると思います。

+78kg

+78kgは朝比奈沙羅選手と素根輝選手が出場しました。

朝比奈選手は準々決勝戦でトルコのサイト選手に敗退しましたが、敗者復活戦と3位決定戦で勝利し3位に入賞することが出来ました。

素根選手は決勝戦でキューバのオルティス選手を破って優勝しました。

団体戦

団体戦は男子-73,-90kg,+90kg、女子-57,-70,+70kgの6人制で行われました。

引き分けはなくGSで決着をつけます。
また、4点先取した時点で試合は終わりで、3−3の場合は抽選でGS代表戦の階級を決めます。

日本は優勝し3連覇を達成しました。
オリンピックでも正式種目になりましたので、非常に楽しみです。

−73kgは橋本選手が2回戦から準決勝戦までメンバーに入っていたのですが、決勝戦は大野選手がメンバーに入っていました。

決勝戦のオーダー発表のとき、大野選手の名前が呼ばれると会場から歓声が湧きました。
そしてその歓声に答えるかのように、試合では圧倒的な力の差を見せつけていましたね。

また、-78kgの濵田選手が+78kgでエントリーしており、寝技で何度も勝っていました。寝技が強いと階級が上の選手とも戦えるので良いですね。

試合結果一覧

男子個人戦
-60kg
1位:L.CHKHVIMIANI(GEO)
2位:S.LUTFILLAEV(UZB)
3位:R.NAGAYAMA(JPN)
3位:Y.SMETOV(KAZ)
N.TAKATO(JPN)は3位決定戦でR.NAGAYAMA(JPN)と対戦し敗退。

-66kg
1位:J.MARUYAMA(JPN)
2位:L.KIM(KOR)
3位:H.ABE(JPN)
3位:D.VIERU(MDA)

-73kg
1位:S.ONO(JPN)
2位:R.ORUJOV(AZE)
3位:D.IARTCEV(RUS)
3位:H.HEYDAROV(AZE)

-81kg
1位:S.MUKI(ISR)
2位:M.CASSE(BEL)
3位:A.VALOIS-FORTIER(CAN)
3位:L.MAISURADZE(GEO)
S.FUJIWARA(JPN)は2回戦でS.BOLTABOEV(UZB)と対戦し敗退。

-90kg
1位:N.VAN T END(NED)
2位:S.MUKAI(JPN)
3位:A.CLERGET(FRA)
3位:N.MAJDOV(SRB)

-100kg
1位:J.FONSECA(POR)
2位:N.ILYASOV(RUS)
3位:A.WOLF(JPN)
3位:M.KORREL(NED) 

+100kg
1位:L.KRPALEK(CZE)
2位:H.HARASAWA(JPN)
3位:M.KIM(KOR)
3位:R.MEYER(NED)

女子個人戦
-48kg
1位:D.BILODID(UKR)
2位:F.TONAK(JPN)
3位:U.MUNKHBAT(MGL)
3位:D.KRASNIQI(KOS)

-52kg
1位:U.ABE(JPN)
2位:N.KUZIUTINA(RUS)
3位:M.KELMENDI(KOS)
3位:A.SHISHIME(JPN)

-57kg
1位:C.DEGUCHI(CAN)
2位:T.YOSHIDA(JPN)
3位:J.KOWALCZYK(POL)
3位:R.SILVA(BRA)

-63kg
1位:C.AGBEGNENOU(FRA)
2位:M.TASHIRO(JPN)
3位:M.TRAJDOS(GER)
3位:J.FRANSSEN(NED)

-70kg
1位:M.GAHIE(FRA)
2位:B.TIMO(POR)
3位:S.CONWAY(GBR)
3位:M.PINOT(FRA)
C.ARAI(JPN)は3回戦でB.TIMO(POR)と対戦し敗退。

-78kg
1位:M.MALONGA(FRA)
2位:S.HAMADA(JPN)
3位:L.KUKA(KOS)
3位:M.AGUIAR(BRA)

+78kg
1位:A.SONE(JPN)
2位:I.ORTIZ(CUB)
3位:S.ASAHINA(JPN)
3位:K.SAYIT(TUR)

団体戦
1位:JAPAN
2位:FRANCE
3位:BRAZIL
3位:RUSSIA




総評

今回の世界柔道選手権で優勝した選手は、
-66kg:丸山城志郎
-73kg:大野翔平
-52kg:阿部詩
+78kg:素根輝
の4名でした。

この4名は11月のグランドスラム大阪で優勝し、強化委員の2/3以上が賛成すると東京オリンピックの代表入りが決まります。

昨年のグランドスラム大阪は観客の入りがイマイチで盛り上がりにかけていましたが、今年のグランドスラム大阪は非常に重要な試合となりますので、是非、多くの方に会場まで足を運んでもらいたいです。

 

今回、8日間に渡って世界柔道選手権が日本武道館で開催されました。

決勝ラウンドの演出が凝っていたり、武道のデモンストレーションを行っていたりと、選手だけではなく観客も楽しめるように工夫されておりました

おそらく、柔道をやったことがない人でも楽しい時間を過ごすことが出来たのではないでしょうか。

8日間通じて本当に楽しい時間を過ごすことが出来たと思います。

運営側はお金や体力が大変かもしれませんが、全日本選手権や体重別くらいは、今回の世界選手権くらいの演出おこない、TVで放送してもらえれば柔道をやってみようという人が増えそうな気がします。

私はYouTubeを通じて柔道を広めたいと思っていますが、やはりTV放送の方が編集やカメラワークが断然良いし、臨場感の伝わり方も違いますので、是非TV局の方には頑張ってもらいたいところです。

World Judo
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